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ケーススタディとバイブル

最近人の学習について興味を持っている。その中でMBAのケーススタディについて面白い考え方が出たので、以下に考えを整理する。

なぜケーススタディをするのか。それは経験を疑似体験させることで、新たな「考え方」を経験と紐付け、学習するためである。
MBAの授業では、ケーススタディを頻繁に使う。ケースを使うことでより印象深く新たなコンセプト・考え方を覚えることができる。ケーススタディを利用しないと、なんとなく腑に落ちない。新しいコンセプト・考え方(以下「考え方」)を知っても、ふーんまぁそうだよね、と具体的に考えることができない。ケースでは、抽象的な「考え方」とケースに記述されている具体的なストーリーを紐付けることでより印象に残りやすくなる。更にその抽象的な内容を自信の経験と紐付ければ、確固たる知識を得ることができる。経験をせずとも「考え方」を経験と結びつけることができる。経験を疑似体験させる。これがケースなのだ。

汎用的なケースをつくれないか?
MBAでは授業毎に異なったケースを利用することが多い。なぜか。これは学習すべき「考え方」に合わせたケースを選ばなければいけないからである。各授業では何か新しい「考え方」を学ぶ。そうすればその「考え方」に合わせた新たなケースが必要となるだろう。しかし、各生徒にとってケースを読むことは非常に負担となる。そこで思いつくのは、様々な「考え方」を学ぶことができるケースを作ることはできないか、ということである。完全に汎用的なケース(経験の疑似体験)を一度記憶すればあらゆる「考え方」を理解することができるはずである

完全に汎用的なケースはバイブルと呼ぶことができる。
完全に汎用的なケースでは、そこからあらゆる「考え方」を学ぶことができる。逆に言えば、全ての「考え方」の根底にあるものは経験という揺るぎない事実である「完全に汎用的なケース」であり、それは公理であろう。
これに非常に近い考え方が宗教である。宗教では、バイブルと呼ばれる揺るぎない事実を認めると、その後に広がる世界は非常にロジカルできれいな世界となっている。あらゆる考え方はバイブルに基づく。つまり、完全に汎用的なケースはバイブルなのだ。

現代に合わせたバイブルが必要ではないか。
この数千年は人類は様々な新たな「考え方」を獲得してきた。一方で、揺るぎない事実であるバイブルは、数千年前のものである。最新の「考え方」をも包括する経験の疑似体験させるケース(バイブル)を作成し暗記すれば、経験せずとも新たな「考え方」を非常に高速に理解することができるのではないか。
では、バイブルを作成するとするとどのような内容になるか。全ての「考え方」を包括するストーリー。
私は、全く異なる2つのストーリーを比較することで全ての「考え方」を包括することができるのではないかと考えている。ストーリーの差分を見つけることで、それが新たな「考え方」となっているような2つのストーリーを作ってみたい。
例えば一つのストーリーとしてポケモンを考えてみよう。ポケモンでは、「人」が「モンスター」を「使役」している。これと全く異なるストーリーでは、以下の項目を含むべきである

  • 「人」を理解するために「人」以外の登場人物が必要
  • 「モンスター」を理解するために「モンスター」以外の登場人物
  • 「使役」を理解するために「使役」ではない設定
  • その他、「物質」や「動物」といった概念についても理解してもらいたい等

そうしたときの2つ目のストーリーは、「アリ」と「石ころ」が「共存」している、といった内容になろう。「人」と「アリ」を比較することで、人・動物等の考え方が可能となり、「石ころ」と「モンスター」を比較することで物質や動物といった考え方が可能となる。使役・共存についても同様である。

このように全ての概念を包括した完璧なバイブルを作成し、暗記することで、非常に高速な学習が可能となるのではないか。

次回では、完璧なバイブルについての洞察と、考え方の階層構造と座禅について記述したい。